◆ 第十句集
恒子 四十九日に
妻とするめんない千鳥花野みち
私は私で昨年米寿を祝っていただいたのだが、平成十四年に珍しく大病をし、その入院中に妻を失うという、言わば人生の谷間を流離う経験をし、未だにその余波を抜け切っていない。体力はないのだが気力だけでも一新充実するために、妻への鎮魂と、取り残されている人生谷間の三年間の句に、日の目を見せてやることにしたのが本著である
(あとがき)
破魔矢手に大和心のありやなし
松立てて笑ふ門とは言ひもせし
亡き妻を探しにきたる初雀
山茱萸の花老に今日老に明日
ミモーザの花をこぼるる知と情と
囀の風に微塵となることも
瀧の面をわが魂の駈け上る
万緑の中のわが身と妻の身と
曝しある良書にまじる一書かな
今生の月の懸りし厳島
装丁・君嶋真理子 四六判上製函装 256頁
●著者略歴
本名日奈夫。大正6年大阪生まれ。神戸一中・一高を経て昭和16年阪大理学部物理学科卒。昭和27年父夜半につき俳句入門、「ホトトギス」「玉藻」にも学ぶ。同29年より「諷詠」編集兼発行人。同36年「ホトトギス」同人。同51年父の没後「諷詠」主宰。昭和62年より俳人協会副会長。現在、同顧問、日本伝統俳句協会顧問、大阪俳人クラブ顧問など。日本文芸家協会会員。兵庫県文化賞、神戸市文化賞、大阪府文化芸術功労者表彰。地域文化功労者文部大臣表彰。第2回俳句四季大賞受賞。